介護士17年目で気づいた。「観察力」は利用者様を知ることから始まる

介護・仕事

介護の仕事には、いろいろな能力が求められます。

介助技術、コミュニケーション能力、体力、判断力。

その中でも、17年間介護の仕事を続けてきて特に大切だと感じるようになったのが「観察力」です。

とはいっても、特別なことをしているわけではありません。

「今日はいつもと少し違うな」

そんな小さな違和感を見逃さないこと。

私が考える介護の観察力は、そこから始まるのだと思っています。

「あれ?」と思うことを大切にする

普段から利用者様と接していると、ほんの些細な変化に気づくことがあります。

返答がいつもより少し遅い。

視線に違和感がある。

呂律や話し方がいつもと違う。

歩き方が少しおかしい。

表情がいつもと違う。

一つひとつは、それだけで何か異常があるとは言い切れないものばかりです。

でも、私は最近「なんとなく変だな」と思った時に、その疑問をそのまま流さないようにしています。

過去には、「あれ?」と思ったすぐ後に脳梗塞で倒れた利用者様もいました。

幸い、頭の中に小さな疑問が残っていたことで、異変が起きた時にすぐ対応することができました。

もちろん、すべての違和感が病気につながるわけではありません。

それでも、「気のせいだろう」と決めつけてしまわないことは、介護の現場では大切なのだと思います。

普段を知っているからこそ「違い」に気づける

私が普段から見るようにしているのは、歩行状態や表情、目線、返答の速さなどです。

ただ、それだけではありません。

その方がどんな既往歴を持っているのか。

どんな疾病があるのか。

普段はどんな性格なのか。

どのくらいのADLなのか。

そういったことを知っていると、「今日の様子」を見る視点も変わってきます。

例えば、片麻痺がある方なら患側だけではなく、健側にも変化がないか。

認知症の方なら、普段と違う言動や行動がないか。

過去に脳梗塞を患った方なら、話し方や身体の動きに変化がないか。

利用者様全体を一括りに見るのではなく、「この方の場合は、ここを見る」という視点が自然と身についてきました。

これは新人の頃には、なかなかできなかったことです。

「今日は調子が悪いのかな」で終わらせなくてよかった

特に印象に残っている出来事があります。

その方は言語障害がありましたが、とてもしっかりされていて、明るく話好きな利用者様でした。

ある朝、いつもと少し様子が違いました。

表情が暗く、歩くのもしんどそうに見えました。

「大丈夫ですか?」

そう声をかけると、「大丈夫」と返事がありました。

その方には躁鬱の症状もあったため、私は一瞬「今日は調子が悪い日なのかな」と思いました。

ところが、その直後です。

歩いている途中で膝折れが起こり、転倒しそうになりました。

私は咄嗟に身体を支えることができました。

そして、その後に分かったのが脳梗塞でした。

もし、最初に感じた違和感を「今日は調子が悪いだけだろう」と納得して、その場を離れていたら。

転倒を防げなかったかもしれません。

そして、異変そのものの発見も遅れていたかもしれません。

この経験から、改めて「小さな違和感を見逃さないようにしよう」と思うようになりました。

観察力を身につける一番の方法

では、観察力はどうすれば身につくのでしょうか。

私は、まず「コミュニケーション」だと思っています。

新人の頃から、利用者様一人ひとりの既往歴や疾病、性格、ADLなどをすべて覚えることはできません。

だからこそ、まずは声をかける。

会話をする。

介助をしながら、その方のことを知っていく。

そうやって関わる時間を少しずつ増やしていくことで、その人の「いつも」が分かるようになります。

そして、「いつも」が分かるからこそ、「今日は少し違う」という変化にも気づけるようになります。

観察力というと、何か特別な技術のように聞こえるかもしれません。

でも、その土台にあるのは、その方を知ろうとする気持ちなのだと思います。

「知ること」は距離を縮めること

利用者様のことを知る。

それは、単純に情報を覚えることではありません。

その人がどんなことを大切にしているのか。

どんな話が好きなのか。

普段はどんな表情をしているのか。

どんな時に嬉しそうにするのか。

どんなことを嫌がるのか。

そうした一つひとつを知っていくことで、その方との距離も少しずつ縮まっていきます。

そして、それは利用者様に自分のことを知ってもらうことでもあります。

こちらが一方的に観察するのではなく、お互いを知っていく。

その関係ができてくると、介護の仕事は少しずつ変わってくるように感じます。

観察力は17年間の「積み重ね」だった

新人の頃の私は、目の前の介助をこなすことで精一杯でした。

今では、介助をしながら会話をして、その人の表情や動きにも目を向ける。

そんなことが自然にできるようになりました。

もちろん、今でも判断に迷うことはあります。

すべての異変に気づけるわけでもありません。

それでも、これまで利用者様と接してきた時間が、自分の中に少しずつ積み重なっているのだと思います。

介護士としての経験値というのは、単純に「何年働いたか」だけではありません。

その間に、何人の利用者様と向き合い、どれだけその人を知ろうとしてきたか。

私は、それも経験値の一つなのだと思っています。

まとめ

介護の観察力は、「異変を見つける能力」だけではないと思います。

その方の普段を知ること。

会話をすること。

その人らしさを知ること。

そして、「あれ?」と思った小さな違和感を見過ごさないこと。

その積み重ねが、結果として利用者様の安全や安心につながっていくのだと思います。

新人の頃は、利用者様のすべてを理解することなんてできません。

失敗することもあるでしょう。

判断を間違えることもあるかもしれません。

でも、まずは声をかけてみる。

少しずつ話をしてみる。

その方を知ろうとしてみる。

そこから始めればいいのだと思います。

「知ること」とは、その方との距離を縮めること。

そして、その距離が縮まった時に初めて見えてくる「いつもと違う」があります。

17年間介護を続けてきた今、私はそんなふうに「観察力」を考えています。

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