介護現場では、「転倒」は最も身近で、最も注意しなければならない事故の一つです。
17年以上介護職として働いてきた私も、これまでさまざまな転倒場面を経験してきました。
その中でも、今でも忘れられない出来事があります。
今回は、その経験を通して私が学んだ「転倒予防で本当に大切なこと」についてお話ししたいと思います。
忘れられない初回利用の日
前職でデイサービスに勤務していた頃のことです。
初めて利用される方を受け入れ、声をかけながら誘導していました。
その方は介護度も低く、受け答えもしっかりされていました。
私は心のどこかで、
「この方なら大丈夫だろう。」
と思っていたのだと思います。
立ち上がった瞬間、その方はふらつき、そのまま転倒してしまいました。
すぐそばにいたにもかかわらず、補助することもできませんでした。
せっかく楽しみに来てくださった初回利用の日。
その日に転倒させてしまったことは、今でも忘れられません。
「大丈夫だろう」は一番危ない
この経験から強く感じたことがあります。
それは、
「大丈夫だろう」という思い込みが、一番危ない。
ということです。
介護度が低いから。
しっかり話せるから。
歩けるから。
そうした先入観が、スタッフ側の油断につながることがあります。
実際には、認知症のある方や介護度の高い方よりも、自分で動ける方のほうが危険な場面も少なくありません。
だから私は、どの利用者様に対しても「絶対に安心はない」という気持ちで関わるようにしています。
歩行補助具は「自分の手足」
デイケアでは、杖や歩行器、シルバーカーを使われる方が多くいらっしゃいます。
それでも、
「ちょっとそこまでだから。」
と使わずに歩こうとされることがあります。
そんな時は、
「忘れていませんか?」
「使って行きましょうね。」
と声をかけます。
そして時々、
「歩行補助具は、ご自分の手足だと思って大事にしてくださいね。」
とお伝えすると、皆さん笑顔になってくださいます。
笑顔になっていただきながら、安全にもつながる。
そんな声かけを心掛けています。
転ばせないことだけが介護ではない
もちろん、転倒予防はとても大切です。
だからといって、何でも介助してしまうことが正解ではありません。
必要以上に手を出すことで、その方が本来できることまで奪ってしまうことがあります。
時には、それが失礼になることもあります。
そんな時、私が大切にしているのが「見守り」です。
安全を確保しながら、その方が自分でできることは見守る。
「できる」を「できた」に変える機会を奪わないことも、介護職の大切な役割だと思っています。
転倒をゼロにすることは難しい
介護現場で転倒を完全になくすことは、とても難しいことです。
どれだけ注意していても、防げない事故はあります。
だからこそ大切なのが「ヒヤリ・ハット」です。
事故が起きた時、
「誰が悪い」
で終わるのではなく、
「どうすれば次は防げるだろう」
と考えること。
そして、その情報をチーム全体で共有し、同じ介助方法や声かけを実践していくこと。
その積み重ねが、利用者様の安全につながっていきます。
まとめ
17年間介護の仕事を続けてきて思うことがあります。
介護は、「転ばせないこと」がゴールではありません。
その方らしく生活していただくこと。
そのために、安全と自立支援のバランスを考え続けること。
それが介護職の役割だと思っています。
そして私は今でも、あの日の転倒を忘れていません。
忘れないからこそ、今日も一人ひとりの利用者様と向き合い、「大丈夫だろう」と決めつけない介護を心掛けています。
余白日記では、17年以上介護職として働いてきた経験をもとに、介護・働き方・暮らしについて発信しています。
現場で感じたことや学んだことを、一人の介護福祉士としてこれからも等身大の言葉で綴っていきます。


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