「介護職に向いている人って、どんな人ですか?」
もしそう聞かれたら、私は少し考えてしまいます。
お年寄りが好きな人。
優しい人。
人と接することが好きな人。
もちろん、そういった部分は介護職にとって大切です。
でも、17年間介護の仕事を続けてきた今の私が思う「向いている人」は、少し違います。
それは、
「どうして自分は介護の仕事をやろうと思ったのか」という原点を大切にできる人。
そんな人なのではないかと思っています。
「お年寄りが好き」「優しい」だけでは難しいこともある
介護職というと、
「優しい人が向いている」
「お年寄りが好きな人が向いている」
というイメージがあるかもしれません。
もちろん、それは間違いではありません。
利用者様に優しく接することは大切ですし、人に対する思いやりも必要です。
ただ、仕事として介護をするようになると、「好き」や「優しさ」だけではどうにもならない場面にもたくさん出会います。
利用者様の希望をすべて叶えられるわけではありません。
安全のために、やめていただかなければならないこともあります。
時には厳しい声をかけなければならないこともあります。
自分が良かれと思ってしたことが、利用者様には受け入れてもらえないこともあります。
身体的にも精神的にも大変な場面があります。
だから、「優しい人だから介護職に向いている」と簡単に言い切ることはできないと思っています。
それでも「好き」という気持ちは大切
では、何が大切なのか。
私はやっぱり、最初のきっかけだと思います。
「介護に興味があった」
「福祉の仕事をしてみたかった」
「お年寄りと関わる仕事がしたかった」
「誰かの役に立つ仕事がしたかった」
きっかけは、人それぞれでいいと思います。
最初は、そんなシンプルな気持ちで十分です。
そして実際に働き始めて、つらいことや悩むことが出てきた時。
「自分は何でこの仕事を始めたんだっけ?」
と振り返ってみる。
その時に、最初の気持ちを思い出せる人は強いのではないかと思います。
柔軟性や傾聴力は、経験の中で身につけられる
介護の仕事では、柔軟性や傾聴力も大切です。
自分の考えだけを押し通してしまうと、利用者様との関係がうまくいかないことがあります。
相手の話を聞く。
相手の考えを理解する。
そのうえで、自分の考えも伝える。
こうしたコミュニケーションは、介護職にとって欠かせません。
でも、最初から何でもできる人はいません。
人とのコミュニケーションが苦手な人もいるでしょう。
相手の話を聞くことが苦手な人もいるでしょう。
自分の考えを曲げることが苦手な人もいると思います。
私は、それ自体が「介護職に向いていない」ということではないと思っています。
大切なのは、
「苦手だから、少しずつでも改善していこう」
と思えるかどうかです。
自分の欠点に気づき、それを仕事の中で学んでいく。
そうすれば、経験によってカバーできる部分はたくさんあります。
新人の頃は、自分が向いているのか分からなかった
私自身、最初から「自分は介護職に向いている」と思っていたわけではありません。
初めて介護施設に入職した時、周りの先輩職員さんからは、
「向いてるよ」
と言っていただいていました。
でも、自分自身ではまったく分かりませんでした。
何しろ未経験からのスタートです。
利用者様一人ひとりに、それぞれ違った対応が必要です。
名前を覚える。
ADLを覚える。
その人の性格を知る。
どんな声かけが合うのかを考える。
それに加えて、職場のルールや業務内容も覚えなければいけません。
覚えることが本当にたくさんありました。
「誰よりも早く覚えたい」
「早く戦力になりたい」
と思っているのに、なかなか思うようにできない。
悔しく感じることもたくさんありました。
そんな時、自分が介護職に向いているのかどうかは分かりませんでした。
ただ、一つだけ考えていたことがあります。
「この仕事を続けたいかどうか」
向いているかどうかよりも、そちらを考えていたように思います。
17年続けた理由は、結局「この仕事が好きだから」
そして、17年介護を続けてきた今。
「なぜここまで続けられたんですか?」
と聞かれたら、私はとてもシンプルに答えると思います。
「この仕事が好きだからです」
最初に「好きだけでは難しい」と書きました。
それは今でもそう思います。
でも、いろいろな経験をしてきたからこそ、今は「好き」という気持ちだけでは乗り越えられないことを、経験によって乗り越えられるようになったのだと思います。
利用者様との関わりで悩んだこともありました。
失敗したこともあります。
職場で悩んだこともあります。
転職を考えたこともあります。
それでも、その一つひとつを経験してきた結果、今も介護の仕事をしています。
気がつけば17年です。
振り返ってみると、長いような、あっという間のような時間です。
「続けること」と「環境を変えること」は両立できる
介護職を続けていると、
「今の職場が合わないから、介護に向いていないのかもしれない」
と思ってしまう人もいるかもしれません。
介護の現場では、そもそも「これが絶対に正しい」という答えがない場面もたくさんあります。以前、そんな「正解のない介護」についても書きました。
でも、それは別の話だと思います。
介護という仕事が好きでも、職場環境が自分に合わないことはあります。
人間関係。
勤務時間。
仕事内容。
給与。
働き方。
自分が大切にしたいものと、職場の環境が合わないこともあります。
私自身もいろいろな経験をしてきました。
そして、経験を重ねることで、
「自分が望む労働環境に変えていく」
ということへの恐れも少なくなりました。
転職することも、一つの選択肢です。
環境を変えることも、介護を続けるための方法の一つです。
「介護を続ける=今の場所に居続ける」
ではありません。
これも17年間働いてきて感じるようになったことです。
介護職に向いているかどうかは、最初から分からなくていい
これから介護職を始めようとしている人に伝えたいことがあります。
最初から「自分は介護職に向いているのか」と悩みすぎなくてもいいと思います。
やってみなければ分からないことはたくさんあります。
実際に利用者様と接してみないと分からないこともあります。
働いてみて初めて、自分の得意なことや苦手なことに気づくこともあります。
最初から何でもできる必要はありません。
苦手なことがあってもいい。
失敗してもいい。
悩んでもいい。
その経験の中から少しずつ学んでいけばいいと思います。
そして、もし悩んだ時には、一度最初の気持ちを思い出してみてほしいと思います。
最初の「シンプルな気持ち」を大切にしてほしい
介護や福祉に興味を持って、
「実際に触れてみたい」
「やってみたい」
と思った。
そのきっかけは、どんなにシンプルなものでもいいと思います。
むしろ、そのシンプルな気持ちを大切にしてほしい。
仕事をしていれば、悩むことがあります。
落ち込むこともあります。
「もう辞めたい」と思うこともあるかもしれません。
そんな時、自分を支えてくれるのは、案外、最初のシンプルな気持ちなのではないでしょうか。
「人の役に立ちたいと思った」
「お年寄りと関わりたかった」
「介護に興味があった」
「なんとなくやってみたかった」
それで十分です。
そして、いろいろな経験をした先に、
「この仕事が好きだから」
という答えにたどり着くことができたら、とても素敵なことだと思います。
まとめ
17年間介護を続けてきましたが、今でも「自分が介護職に向いているのか」と聞かれたら、正直なところ分かりません。
ただ、17年続けてこられた理由なら分かります。
この仕事が好きだからです。
介護職に向いているかどうかは、最初から決まっているものではないのかもしれません。
苦手なことも、経験によって少しずつ変えていける。
失敗から学ぶこともできる。
環境が合わなければ、環境を変えることもできる。
だから、これから介護職を始める人には、
「向いているかどうか」よりも、「なぜやってみたいと思ったのか」を大切にしてほしい。
と伝えたいです。
その最初の気持ちを忘れずに、一つひとつ経験を積んでいく。
その先で、
「やっぱり、この仕事が好きだな」
と思えたら、それはきっと、その人にとっての一つの答えなのだと思います。


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